110フィルムは,幅約16mmのフィルムが裏紙とともに,専用カートリッジに収められたものである。巻き上げ軸の端はギアになっており,カメラの巻き上げ機構に連動する。フィルムには裏紙があり,裏紙に印刷されたコマ番号は,カートリッジの背面にある窓から見ることができる。カメラの裏蓋にも,このための窓がつけられている。
110フィルムはすでに製造,販売が終了しているので,これからも110フィルム用のカメラを使いたいときは,110フィルムを自作するしかない。110フィルムのカートリッジを確保しておき,再利用して大切に使うようにしよう。
フィルムをつくれば撮影可能だが,それを現像しなければ,写真として楽しむことができない。110フィルムの現像は,将来的に現像所で受けつけられなくなる懸念もあるので,自分で現像できるようになっておく必要がある。ただ,16mm幅のフィルムを現像するためのタンクやリールは,すでに市販されていないようである。また,小型タンクで使えるリールを自作するのは難しそうである。
フィルムを巻いた状態で支えるから難しいのであり,直線状にして支えるのであれば,比較的容易ではないだろうか。それには,「配線カバー」とよばれるものがちょうど使えそうである。
配線カバーはさまざまなサイズのものが売られているが,内側の幅が17mmのものがあった。幅16mmの110フィルムを支えるのにちょうどよい大きさである。この配線カバーを約800mmの長さに切り,ところどころ大きく穴をあけておいて,現像液が十分にまわりこむようにしておく。これが現像リールのかわりとなる。
100円ショップ「ダイソー」で売られている配線カバーのうち,「Lサイズ」(幅21mm)というものの内側の幅が,約17mmだった。
この配線カバーを入れるための容器として,内側の直径25mm,長さ1mの塩ビ管(水道管)を使うことにした。半径1.25cm,長さ100cmだから,なかに入る液の量は最大で,
1.25×1.25×3.14×100=490.625 (cc)
となる。処理するときにはここに配線カバーが入るので,実際に必要な液の量は,およそ450mlとなる。
これが,現像タンクとなる。塩ビ管は,両端のふたを含めても,ホームセンターなどで数100円で購入可能である。
タンクの形が違っても,現像の処理手順にかわるところはない。ただ,この配線カバーと塩ビ管を利用した道具では,遮光の工夫をしていないので,薬品の入れかえを暗黒中でおこなわねばならない点が,要注意である。
1 手順としては,まず,必要な量の現像液と定着液を容器にはかりとっておく。
2 塩ビ管に現像液を入れ,蓋をしておく。
3 暗室にして,配線カバーにフィルムをさしこんでいく。
4 塩ビ管の蓋をはずし,フィルムをさしこんだ配線カバーを入れる。
5 塩ビ管に蓋をすれば,あかりをつけてよい。5>
6 規定の時間,攪拌をおこなったら,ふたたび暗室にする。
塩ビ管の蓋をはずして現像液を排出し,定着液を入れる。
7 塩ビ管に蓋をすれば,あかりをつけてよい。5>
8 規定の時間,攪拌をおこなったら,定着液を排出し,水洗をおこなう。