1972年にコダックからあたらしい規格のフィルムとして発売された。旧来の16mm判カメラに近い画面サイズをもつ小さなカートリッジフィルムであり,カメラの小型化,低価格化や,操作の簡便化にも大きく貢献した。しかしながら,画面サイズが小さいことから画質的に不利で,その後,35mm判カメラの小型化が進むにつれて顧みられなくなり,2009年9月をもってすべて販売が終了した。
PENTAX auto110は,110判としては貴重なレンズ交換も可能なシステム一眼レフカメラとして,1979年に発売された。一般的な一眼レフカメラをそのまま小さくしたようなスタイルをもっている。標準レンズは24mm F2.8,交換レンズは広角18mm,望遠50mm,70mm,ズーム20〜40mmが用意され,いずれも開放F値はF2.8であった。いま,システムが充実したカメラでありながら,フィルムが供給されなくなることで使えなくなってしまうという重大な問題に直面している。
110フィルムは,幅約16mmのフィルムが裏紙とともに,専用カートリッジに収められたものである。巻き上げ軸の端はギアになっており,カメラの巻き上げ機構に連動する。フィルムには裏紙があり,裏紙に印刷されたコマ番号は,カートリッジの背面にある窓から見ることができる。カメラの裏蓋にも,このための窓がつけられている。
撮影済みの110フィルムは,カートリッジのまま現像に出す。つまり,110フィルムには「巻き戻し」が必要ない。カートリッジを開いてみると,フィルムの供給側には軸などはなく,裏紙とフィルムがくるくると巻かれているだけであることがわかる。
110フィルムには,1コマごとにパーフォレーションがあけられている。110フィルムは,コマ間にコマ番号が焼きこまれているため,フィルムの位置を確実に固定しなければならないためだ。カメラによっては,このパーフォレーションをフィルムの巻き止めに利用したり,シャッターのチャージに利用したりしている場合がある。
使用済みのカートリッジがあれば,フィルムの詰め替えにチャレンジしてみよう。
まず,別のフィルムから幅約16mmのフィルムを切り出す必要がある。今回は120フィルムから,幅約16mmのフィルムを切り出すことにし,そのための「枠」を作成した。
これを用いて,幅約62mmの120フィルムを,幅約16mmと幅約46mmとに切り分ける。なお,110フィルムのカートリッジに巻きなおして詰めかえるのは,幅約16mmのほうである。残りの幅約46mmのほうは,127フィルムの巻きなおしに利用できる。
110フィルムの24枚撮りの長さは約700mm,一方120フィルムの長さは約800mmである。120フィルムを有効に使えば,24枚撮りができるわけだが,目いっぱい巻きなおすとスムースに巻き上げができなくなる懸念があるので,120フィルムの長さを半分に切って,12枚撮りの110フィルムとして詰めかえることにする。
以下の作業は,すべて暗室内にて手さぐりでおこなう。
1 「枠」を使って,フィルムを切り分ける。
2 切り分けたフィルムのうち,幅約16mmのほうの長さを半分にする。
3 110フィルムの裏紙を少し巻く。フィルムの終端部分から,フィルムといっしょにまきこんでいく。
4 フィルムの先端を残して,裏紙とともにカートリッジに収める。
5 カートリッジを元どおりにはめる。
巻きなおしたフィルムは,コマ番号11あたりから24までのおよそ12枚撮りとなる。
なお,このように詰めかえたフィルムには,本来の110フィルムに存在するパーフォレーションがない。そのため,このパーフォレーションを,フィルムの巻き止めやシャッターのチャージに利用しているようなカメラでは,正常に使用することができない。ところが,PENTAX auto110は,巻き上げレバーを2回,目いっぱい巻き上げることで,フィルムが送られシャッターがチャージされる。このパーフォレーションに依存しなくても,正常に使用可能なのだ。
110フィルムの空カートリッジを確保し,110フィルムを自作して,PENTAX auto110を末永く活用してよう。これは,PENTAX auto110を所有し続ける者の義務でもある。