NIKKOR 300mm F4.5のAi化

絞りリングの根元を削れ!

by ジャンク大帝

ニコンのレンズ

 ニコン一眼レフカメラ用レンズは,最初の「ニコンF」以来,「Fマウント」とよばれるレンズマウントを継承しており,新旧のレンズとボディの間にかなりの互換性を確保している。しかし,組み合わせによっては,機能的な制約があったり,物理的に装着ができなかったりする場合もある。物理的に装着のできない例としては,「Ai対応ボディ」と「非Aiレンズ」の組み合わせがある。今回は,非AiレンズをAi対応ボディで使えるようにするための簡単な工作を紹介する。

Aiと非Ai

 Ai方式とは,「Automatic Maximum Aperture Indexing(開放F値自動補正方式)」を意味する。
 Fマウント用ニッコールレンズは,当初から自動絞りに対応しており,露出計へ絞り値を伝える機構は用意されていたが,レンズの開放F値を伝達することができなかった。そのため,初期のセレン式メーターや初代フォトミックファインダーなど,外光式露出計の場合は問題なかったが,TTL開放測光を実現するときには問題が生じた。最初のTTL開放測光対応ボディ「ニコマートFT」では,レンズを交換するたびに,小さなつまみでレンズの開放F値(とフィルム感度)を設定するようになっていたが,後に,レンズ交換のときに絞りリングを1往復させると開放F値が自動的に設定されるようなしくみが実現された(この操作は「ニコンの儀式」や「ニコンのがちゃがちゃ」などとよばれる)。
 そして,1977年の「ニコンF2フォトミックA」以後,「ニコンの儀式」の必要のない,Ai方式が採用されたレンズ,ボディが流通するようになった。

どこが違うのか

 非Ai方式の旧来のレンズには,2種類ある。初期の「ニッコールオート」(この場合の「オート」は,自動絞りを意味する)と,光学系やデザインを改良した「ニューニッコール」のシリーズである。これらのレンズには,絞り値をボディに伝達するために,F5.6の位置に「カニ爪」とよばれる連動爪がついている。
 一方,Ai方式のレンズは,開放状態からどれだけ絞りこまれたのかをボディに伝達するために,絞りリングに切り欠きがある。なお,多くのAiレンズは,旧来の非Aiボディでも使用できるように,「カニ爪」がついている。これが,Fマウントニッコールの「互換性」の沼のはじまりだったと言えるだろう(笑)。
 ところで,Ai対応ボディは,このAiレンズの切り欠きに連動するピンがマウント部にある。このピンがあるため,Ai対応ボディには,旧来のニッコールオートやニューニッコールを装着することができないのである。もっとも,F2フォトミックAやF3,FMのような初期のAi対応ボディなどでは,それら旧来のレンズが使用できるように,このピンを倒すことができるようになっている。

改造内容

 かつてニコンでは,旧来の非AiレンズをAi化する改造を受けつけていたが,部品がなくなったなどの理由で,改造に対応できるレンズが年々限定されるようになり,すでにメーカーとしては改造を受けつけていない。その改造内容は,絞りリングなどをAi対応のものに交換するというものであった。さすがに絞りリングを自作して交換することは容易ではないが,要は,適切な位置にAiの「切り欠き」をつくればよいのである。
 今回は,NIKKOR 300mm F4.5をAi化する。切り欠きをつくる位置を確認すれば,あとはやすりで地道に削るだけである。ほかのAiレンズを観察すれば,開放から3段絞りこんだ位置に,切り欠きがあればよいことがわかるだろう。

←前へ リスト 次へ→