キヤノンEOS10QD

染み出す油に立ち向かう
ベビーパウダーは効果があるのか?

by ジャンク大帝

カメラについて

 1990年に発売されたAF一眼レフカメラ。ピントの合う点が中央だけではなく,左右に計3個所設けられた,「多点測距」カメラのさきがけといえる。測距点は自動的に選択されるが,手動で選択することも可能である。選択される測距点は,ファインダー内で赤く光るようになっており,確認は容易である。背面の電子ダイアルなどはまだ搭載されておらず,測距点を手動で選択する操作は,やや煩雑である。
 このあと発売される,EOS1000やEOS100などの上級機に相当する。最高シャッター速度は1/4000秒,シンクロ速度は1/125秒で,スペック的には物足りない面もあるが,これらを越えるスペックを必要とする機会は少ないだろうから,重大な問題ではない。一方,インターバルタイマーや多重露出,AEブラケットなどの多機能が搭載されている点については,当時,ほかのEOSにはなかった「多点測距」とあわせて,シリーズ中の上級モデルとしての主張であるとも言えるだろう。

入手

 2007年6月に,日進堂カメラにて,EF35-135mm F4-5.6USMとのセットで入手(\2,300)。

問題点

 レンズにカビがある。
 シャッター幕に油がついている。

概要

 「シャッター幕に油」というのは,この時代のEOSに特徴的に見られる症状である。これは,シャッターに設けられたゴム部品が劣化し,油状になってシャッター幕に付着するもので,症状が重くなるとシャッター幕の動作に重大な支障をきたすようになる。この油状物質の清掃作業については,すでにKEN氏が何度かにわけて,そのコツも含めて公開されているので,そちらも参照。
 レンズは,EOS10とセット販売されたもので,広角35mm側でもF4という,たいへん暗いものであるが,このような廉価版レンズもUSM化していた点が,EOSのシステムとしての魅力だった。このレンズには,カビが広がった面が複数認められていた。

清掃

 シャッター幕左下に,わずかに油状物質の付着が見られたため,有機溶剤(このときは,GANGYミスノン「うすめ液」を使用)をレンズクリーニングペーパーにしみこませて,シャッター幕を傷めないように軽く拭き取ることを繰り返す。シャッター幕の間にもレンズクリーニングペーパーを差しこみ,黒いものがつかなくなるまで,それを繰り返す。幸い,ここでは付着していた油状物質の量が多くなかったせいか,比較的容易にふき取ることができた。
 油状物質の供給源は,シャッターユニットに取りつけられているゴム部品である。この表面をなんらかの形で覆ってしまえば,今後,油状物質が付着しにくくなるのではないかと考えた。実際には分解してシャッターユニットを取り出し,ゴム部品を交換してしまうのがもっともよいのだが,それはおおごとになる。そこで,シャッターの隙間からベビーパウダーを送りこみ,ゴム部品の表面を覆ってくれることで,油状物質の付着が起こりにくくならないか試してみることにした。
 とりあえず,シャッターは高速時にもちゃんと開いており,あらたな油状物質の付着は見られなくなった。この状態がどれくらいのあいだ維持されるか,また,ベビーパウダーを送りこんだことによる別のトラブルが発生したりしないか,今後,経過を観察していきたいと思う。

 レンズについては,前玉と後玉の表面に,激しいカビが認められた。まずは,それら表面を清掃する。清掃には,ハンドソープを薄めた液を用いた。液を綿棒に取り,カビのある面を拭く。すると汚れなどとともにカビも除去されるようである。そのあと,レンズクリーナー液とレンズペーパーで清掃をする。カビは広く存在していたが,あまりレンズを侵食していなかったのか,跡は残っていないようである。
 前玉と後玉の表面を清掃しても,まだ,カビのある面が1つ見える。カビがあるのは広い面であることから,前玉の裏側あたりだろうと予想できたので,前玉からはずしてみることにする。レンズ正面のプラスチックのリングをカニ目回しではずすと,前群レンズを止めているネジがあらわれる。その3本のネジをはずすと,前群は簡単にはずれ,その裏側にあったカビを同様に拭き取ることができた。ここまでの分解・組み立ては容易であるが,プラスチックの弱そうな部品で構成されているため,ネジを強く締めすぎないことがとくに重要かもしれない。

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