フジカ ST-F

腐食したプリズムの応急措置 やりなおし

by ジャンク大帝

カメラについて

 「フジカ ST-F」は,世界初の「フラッシュ内蔵一眼レフカメラ」とされている。ただ,一眼レフカメラといっても,一般的にイメージされる一眼レフカメラとは大きく異なる。
 この当時の一般的にイメージされる一眼レフカメラは,金属部品を多用した大きく重いボディをもち,交換レンズやワインダーなどのシステムが充実した,プロやマニアが使うカメラであった。フジカにも,STシリーズという一眼レフカメラのシリーズがラインアップされていた。翻って「フジカ ST-F」を眺めれば,プラスチック製の小さく軽いボディをもち,40mm F2.8のレンズが固定されていて交換ができない。一眼レフカメラではあるが,一眼レフカメラのSTシリーズとは異なり,むしろコンパクトカメラのフラッシュフジカのシリーズに似た印象のカメラである。また,多くの一眼レフカメラでは,レンズ交換を実現するためにフォーカルプレンシャッター(フィルムの直前に配置された,開閉する幕によるシャッター)が採用されている。「フジカ ST-F」のシャッターは,穴があけられた幕がミラーに結び付けられたもので,ミラーの動きによって露光されるという比較的簡素なしくみのものである。

 そうは言っても,「フジカ ST-F」は一眼レフカメラである。一眼レフカメラの本質は,レンズ交換などの充実したシステムでもなければ,多機能で高性能なフォーカルプレンシャッターでもない。撮影用のレンズを通った像をミラーでファインダーに導くしくみが,一眼レフカメラの本質である。これによって,フィルムに写るものと同じ像を確認できることが,一眼レフカメラの本質的なメリットである。

症状

 ファインダーに写る像の中央部が,左右に帯状に欠落している。

 一眼レフカメラにおいて,ミラーで導かれた像は左右が反転している。また,像に対して垂直の方向にある。これを目で見たときと同じ向きになるように,多くの一眼レフカメラはファインダー部分にプリズムが用いられている。このプリズムが腐食すると,ファインダー像の欠落が生じる。

分解

 分解は容易である。見えているネジをはずし,巻き戻しクランクの下に隠れているネジをはずせば,トップカバーは簡単にはずれる。

 プリズムを取り出してみると,案の定,左右にわたる腐食部があった。まずは腐食している部分をきれいにはがす。

 本来はきちんとメッキをしなおすべきなのだろうが,このカメラにそこまでの費用はかけたくない。以前はアルミ箔を貼ったのだが,それよりも効果のありそうなものとして,ミラー状になっている塩ビ板を試してみることにした。

 ミラー状の塩ビ板をプリズムの大きさに切り取り,プリズムにあてがって元の位置へはめこむ。

元の位置にはプリズムを抑えるためのモルトプレンが貼られており,モルトプレンの劣化に伴ってプリズムも腐食したようだ。

あとは,元通り組み立てる。アルミ箔よりはマシだが,ファインダーの見え具合はすっきりしたものにはならないし,その部分での厳密なピントあわせは困難である。それでも,まあなんとか我慢できるくらいにはなった。

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