1988年に発売された,ズームレンズ一体型AF一眼レフカメラ。京セラ「SAMURAI」やチノン「GENESIS」などについで登場した,新しいコンセプトのカメラの1つなった。
角度を変えられるグリップ,平べったい印象のフォルムなどの独特の外観を示す。35-135mm F4.2-5.6のズームレンズを搭載し,最短撮影距離は1.2mである。マクロモードに切り替えると,焦点距離は中望遠域に固定され,0.49mまでの近接撮影が可能になる。シャッター速度のレンジは1/2000秒〜32秒と広く,2コマ/秒の連写も可能で,内蔵スピードライトは比較的大きなGN15(ISO100)である。
2003年ころに,故障品としてゆずっていただいた。
ズーム操作についても,ピント操作についても,レンズが動かない。電源をOFFにしても,レンズが本体内に完全にひっこまない。
レンズが少し出た状態で動かなくなっている。
しかし,電源はONになる。電源をONにしてズームレバーを操作すると,ちいさなカチッという音はするので,電子回路やモーター等にはまだ大きな問題はなく,レンズが機械的に固まっているだけのように思われる。
露出計も問題なさそうであり,フラッシュも発光する。AF/MF切り替えスイッチをMFにすれば,シャッターはほぼ正常に動いているように見える。MFモードにして,MFボタンを押し,ズームレバーを操作すると,マニュアルフォーカスができるのだが,その場合もレンズは動かない。内部でやはり固まっているようだ。
レンズを無理やり動かしてみることで,固まった状態から抜け出せないかと考えた。しかし,ボディから少し出ているだけのレンズに,多少の力を加えた程度では動きそうにない。そこで,カバーを開けて,内部のギアなどを直接動かすことができないかと考えた。カバーは上側と下側に大きく分かれるようだ。上側にはシャッターボタンがあったり,フラッシュがあったりするので,あとからの組み立てが面倒に思われたので,とりあえず下側を開けてみることにする。
下側のカバーは,7つのネジをすべてはずせば,はずすことができる。底面の2つのスイッチは,カバーにしっかりととめられているので,不用意にカバーを開けることによって,スイッチがばらばらになってしまう心配はない。それらのスイッチと本体を結ぶコードは細いが,数も少なく,長さにも余裕があるので,不用意に切ってしまうこともないだろうし,切れてしまっても補修は難しくないと思われる。
レンズの根元にあたる部分がギアになっているので,ここにを回してみる。モーターとの間にウォームギアなどはないようで,モーターの手ごたえを感じながら少しずつ動かすことができた。同時に,カム部など見える範囲の清掃をおこなってみる。これを何度か繰り返すうち,レンズが比較的スムースに動くようになってきた。「固まっていた」状態を抜け出したものと思われる。
そこで,電源をONにして,ズームレバーを操作してみると,レンズは動作をした。最初はぎこちなかったが,ふたたび清掃をするなど繰り返しているうちに,スムースに動作するようになった。そして,電源をOFFにすると,レンズはすーっと,本体にひっこんでいったのである。
その後,ズームもAFもMFも,すべて動作するようになった。
しばらく快調に動作していたものの,その後,ふたたび動作が固まるようになった。そこで,今度は上側のカバーをはずすことにする。上側のカバーには,コードによる配線はきておらず,安心してカバーをはずすことができた。
ピント等を動かす元のギアは,基盤の下の奥の方にある。そこには容易に到達できなかったが,すきまから観察してみたところ,薄いギアが少し歪んでいるように見えた。そこを細いドライバの先で抑えてみたり,綿棒で清掃したりを繰り返すうちに,どうやらスムースな動きが戻ってきたようである。
このあと,フィルムを入れて試し撮りをしてみた。フィルム1本を撮る間,動作があやしくなることもなく,その順調な動作を見せてくれている。
これは,マクロモードで,絞り開放で撮影したもの。中心部はそこそこシャープに見えるが,周辺減光が極端である。