後にツァイス・イコンを結成するカメラメーカーの1つ,ベルリンのC.P.ゲルツが発売した小型クラップカメラ。発売期間は1909年から1926年の長期にわたるとされるが,細かい改良や,さまざまなレンズやシャッターのバリエーションも見られる。
このテナックスは,6cm×4.5cm判のアトム判とよばれる乾板用のカメラで,たたむと手のひらにすっぽりおさまるくらいの小さなカメラである。
アトム判の乾板やシートフィルムは,現在,市販されていない。シャッターやレンズなどが正常に動作していても,フィルムがなければ写真は撮れないのである。
フィルムがなければ,フィルムをつくるしかない。
しかし,ベースフィルムや乳剤をつくるのは,素人には無理だ(笑)。しかし,より大きなサイズのフィルムをカットするなら,だれにでもできる。
テナックスは,乾板/シートフィルム用カメラだから,まずは,4×5判のシートフィルムから,アトム判のフィルムを切り出す方法が考えられる。しかし,乾板ホルダを見ると,かなり強いバネで乾板をおさえるようになっていることがわかる。しかも,乾板全体をまんべんなくおさえるような圧板がなく,中央部だけをおさえるような構造だ。固くて平面性のよい,ガラス乾板であることが前提の構造である。
だから,このバネとフィルムの間に,なんらかの板をはさむ必要がある。すると,材質によっては,その板による反射が悪影響をおよぼす懸念がある。
そこで,120フィルムから,アトム判のフィルムを切りだすことにした。
120フィルムには裏紙があり,それを間にはさめば,フィルムをおさえる板の反射を気にする必要がなくなる。
暗室内で手さぐりでもフィルムをカットできるように,プラ板を使ってこのような型枠を作成した。